アニメ論評

必殺シリーズは「仕事人」のみに非ず

必殺は「仕掛人」から始まった

必殺シリーズと言えば、現在も年1回程度のペースで続く「必殺仕事人」が有名であるが、あの作品がすべてではない。
現に「仕事人」というタイトルが必殺史上に登場したのはシリーズ第15作目の話。
それ以前に14作品もの「必殺」が存在しているのだ。


ちなみに第1作は「必殺仕掛人」。
池波正太郎原作の「殺しの掟」や「おんな殺し」などのピカレスク小説をミックスして作った作品である。
必殺仕掛人の登場人物
主人公は表稼業が鍼医の藤枝梅安(緒形拳)と、シリアルキラーの浪人・西村左内(林与一)。
彼らを元締・音羽屋半右衛門(山村聰)が操り、この世に生きていてはならない悪を葬り去る殺し屋のドラマが誕生した。

「仕置人」で中村主水登場

好評だった「仕掛人」の後を受け、第2作「必殺仕置人」が制作される。
主人公は骨接ぎ師の念仏の鉄(山崎努)。
そこに琉球からやってきた手槍の達人・棺桶の錠(沖雅也)が第2番手のキャラクターとして加わる。


必殺シリーズの顔とも言える中村主水(藤田まこと)が登場したのもこのシリーズから。
しかし、当初の主水は主人公ではない。
鉄や錠に知恵を貸す参謀的存在として脇役での初登場だった。


「仕置人」の初期編はワルの親玉を殺さず社会的に抹殺する仕置を行っていたが、徐々に前作「仕掛人」同様、殺しのテクニックが見せ場となっていった。
ちなみに念仏の鉄の殺し技は「骨外し」。
レントゲン映像が挿入される。
当時カメラマンだった石原興氏が手にバリウムを塗り、実際にレントゲン撮影されたものが使用された。



主水復活「暗闇仕留人」

第3作「助け人走る」の第12話「同心大疑惑」でゲスト出演を果たした中村主水。
シリーズ4作目は中村敦夫主演の「おしどり右京捕物車」に決定していたが、山内久司朝日放送プロデューサーが「主水が勿体ないで」と、急遽主水シリーズ第2作目に当たる「暗闇仕留人」の制作を決める(「おしどり右京~」は必殺とは別枠で放送)。


前作「仕置人」からがらりとメンバーチェンジし、主人公には殺しに悩む蘭学者糸井貢(石坂浩二)が擁された。
この作品でもまだ主水は脇役である。
心臓潰しを殺し技とする石屋の大吉(近藤洋介)らと共に、幕末を舞台に許せぬ悪を始末する湿ったような重い作風でドラマは展開されていった。


最終回で苦悩の蘭学者糸井は命を落とす。
そこで初めて、自分たち殺し屋の業を知った主水は一旦裏稼業から足を洗う。

ついに実質的な主役「必殺仕置屋稼業」

主水シリーズ第3作は、必殺シリーズ第6作目に当たる「必殺仕置屋稼業」。
必殺類似作品「影同心」に対抗して、同じ同心キャラの中村主水をついに実質的な主人公に立てた。


仲間は長い竹串を武器にするクールな殺し屋・市松(沖雅也)、破戒僧・印玄(新勝利)ら。
しかし、出演俳優のクレジット問題がここで生じてしまう。
山内久司朝日放送プロデューサーが、沖雅也演じる市松をトップとしてエンディングでクレジットしたのだ。


本来の主役である主水はトメで「起こし」のクレジット。
藤田サイドは納得がいかない。
クレジットを「起こす」という手法で特別出演感は出したが、主人公が誰だか判らないのでは視聴者も混乱してしまう。
この藤田のクレジット問題は必殺シリーズ第10作「新必殺仕置人」まで解決することなく続く。


このように、必殺シリーズには色々な歴史がある。
のちにいわゆる必殺ブームを呼び、タイトルが有名になってしまった「仕事人」のみが必殺ではないのだ。




コンテンツ

あわせて読みたい記事