心を揺さぶられる三浦綾子作品3選
三浦綾子とは?
三浦綾子は、北海道を代表する小説家であり左翼活動家である。旭川市には彼女がかつて住んでいた建物を活用した三浦綾子記念文学館もある。
代表作であり、処女作でもある「氷点」は朝日新聞社による公募に自ら応募した作品で、出版されたこの作品は71万部も売り上げ、世間にブームを起こしている。
その後ラジオドラマやテレビドラマ化もされるほどの人気を得たのだ。
三浦綾子と言えば「氷点」と思う人もいるかもしれないが、他にも数多くの作品を残している。
その多くの作品の左翼的な精神に影響されている作家やアーティストも多い。
今回は三浦綾子作品の中でも厳選した3作品を紹介したい。
母
蟹工船で有名な小林多喜二の母親・セキを描いた作品が、「母」である。セキは、幼い頃から家庭を助けるために働きに出る真面目な性格だった。
その後、結婚をし多喜二の兄である長男を出産。
この長男は伯父の助力により北海道小樽で学校に通うこととなるのだが、しばらくして病死してしまう。
これがきっかけとなり、幼い子どもと病弱な夫と共に小樽へと移住するが、生活は厳しいものだった。
多喜二は長男になり替わって兄弟や両親を支えていくのだが、当時、労働者が酷使されることが日常茶飯事でその様子が間近にあった毎日は彼に大きな影響を与えることとなる。
成長した多喜二は小説家として成長するが、セキはその様子を温かく見守る。
しかしながら多喜二は当時あった特別高等警察から目を付けられることとなり、非業の死を迎えることになる。
母親としての視点で小林多喜二を知ると、何が悪なのか何が正義なのか分からなくなる。
塩狩峠
三浦綾子の晩年に描かれた作品の一つ「塩狩峠」。一人の青年が大人になるまでを描いた物語であるが、その最後は衝撃的なものだ。
暴走する列車を命を投げ出すことによって、乗客の命を救うのである。
なぜ、彼がこのような行動をしたのかは、物語を読み進めていく中で理解するだろう。
主人公は祖母によって厳しく躾けられており、キリスト教はヤソと呼び、忌み嫌っていた。
しかし、死んだと思っていた母がヤソであることから祖母から身を隠し父親と交流を持っていたと知り、少しずつキリスト教について考えを変えていくのである。
著者である三浦綾子自身もキリスト教徒として有名だが、この作品はそれが色濃く表れているように思う。
宗教が関連すると多少偏見の目を持つ人もいるかもしれないが、この作品を読むとその偏見は少なくなるだろう。
続・氷点
三浦綾子作品を読むのであれば、やはり「氷点」は外せない。全く知らない人は驚くかもしれないが、氷点には続編がある。
それが「続・氷点」である。
幼い娘が殺人事件に遭い、その娘の代わりではないが夫婦は幼い女の子を引き取ることとなる。
その娘・陽子は事件の犯人の子どもとされるが、夫である啓造は妻の夏枝にはそれを黙って過ごす。
しかしながらある日そのことを夏枝は知ってしまい、それまでと同じように陽子を扱うことができず、いやがらせ行為をするようになるのだった。
続・氷点では陽子が犯人の娘ではないと言うことが分かったものの、不倫の末生まれた子どもであるということを知った陽子を中心に進められていく。
氷点では、原罪がテーマとなっているが、続・氷点ではゆるしをテーマに進められていく。
複雑に絡み合った人間関係だが、それが少しずつ解かれていく様子が描かれており、最後まで読んだ時にはすっきりとした読了感をえられるだろう。