アニメ論評

漫画「天使な小生意気(西森博之)」のあらすじとレビュー

「天使な小生意気」とは

「天使な小生意気」とは、「今日から俺は!」等で知られる漫画家・西森博之による少年漫画作品だ。
ファンからは「天こな」の略称で親しまれている。
1999年から2003年まで少年サンデーで連載され、2000年には小学館漫画賞を受賞した。
絶世の美少女がヒロインを務めるが、ギャグ色が強く、ヒロインたちの精神やストーリー展開が「熱い」のがこの作品の特徴でもある。


また、伏線の張り方が緻密で、回収が鮮やかな点も本作の特徴であり、大きな魅力でもある。
2002年に、林原めぐみ主演でアニメ化を果たし、2009年にはワイド版の書籍が発行されるなど、長く愛されている作品だ。

「天使な小生意気」のあらすじ

ヒロイン・天使恵には、幼少期に、魔本「天の恵み」から現れた小悪魔によって、少年から少女にされたという過去がある。
自分が元・男であり、魔法で突然女にされてしまったという話は誰に言っても信じてもらえず、そのことを知っているのは恵自身と、恵の幼馴染・花華院美木だけである。


6年後、世にも美しい少女に成長した恵と美木は、本来入るべき高校よりもかなり格下の剣ヶ峰高校に入学した。
その理由は、ある人物から、この学校で魔本が見つかると示唆されていたから。
恵は自分が男に戻ることを諦めていなかったのだ。
そんな彼女の周りには次第に、彼女に一目惚れした凶悪な不良・蘇我源造をはじめ、個性豊かな男たちが集まり始める。


彼らは最初、恵とその取り巻き、という関係でしかなかったものの、様々な困難を共にくぐり抜けていくうち、仲間としての絆が芽生え、それぞれが成長を始める。



「天使な小生意気」のレビュー

私はこの作品のことが、なぜか幼少の頃から好きだ。
この作品のことが忘れられず、大人になってから思い切って、全巻大人買いをした。


正直、私の「好き」という感情には思い出補正が存分にかかっているのだろう、と予想していたのだが、その予想は見事に裏切られた。
子供のときに読んで純粋に面白かったストーリーが、大人になってからはそれ以上に面白く、また心理描写やセリフ回しは非常に奥深く、情緒的で、何度も胸を打たれ、大粒の涙をこぼしてしまった。
また、ヒロイン・天使恵だけが特別な存在であるというイメージを抱いていたのだが、それも全く異なっていた。


この作品では、主人公、恵の親友、恵の取り巻きにいたるまで、全員が主人公だ。
全員にリアルな人格があり、みなが本当に考えて行動している。
そう確信を抱かされる、すさまじい作品だった。

この作品の絵柄について

西森博之作品に慣れていない人からすると、本作の絵柄には少し違和感を覚えるかもしれない。
確かに、美麗な絵柄の漫画が増えた昨今では、この作品の画風は独特だ。
しかし、読んでいけば分かる。
この作品は、この絵柄でなければあり得ない。


この絵柄でなければ描き出すことができないものなのだと。
ヒロイン・天使恵は、誰もが振り返る絶世の美少女である。
その設定に、この絵がこの上ない説得力を与えているのだ。
思うに、言ってしまえば「完璧な絵ではない」からこそ、読者にとって想像の余地がある。
それがプラスに働くのだろう。


者の中で生み出されるイメージが組み合わさることで、天使恵という完璧な美少女が完成するのだ。
その一種不思議な体験を、未読の人にはぜひ味わって頂きたい。



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