漫画「あずみ(小山ゆう)」のあらすじとレビュー
「あずみ」とは
「あずみ」は、小山ゆうによる漫画作品だ。1994年から2008年という長きにわたり連載され、単行本は全48巻出版されている。
時は江戸幕府初期、戦国時代から泰平の世へと移り変わる、まさに過渡期だ。
主人公・あずみは、世を太平に導くため、内乱の芽を摘む刺客として育てられた女剣士。
しかし、そんな正体とは裏腹に、青みがかった目と茶色に近い髪をした、人目を惹く美少女であった。
本作では、そんなあずみの戦いと、世が移り変わるさま、あずみの成長、そして、成長にともなうあずみの苦悩が描かれている。
2003年・2005年には映画化も果たした傑作。
漫画「あずみ」のあらすじ
江戸幕府初期、「爺」と呼ばれる凄腕の剣士に、刺客として育てられた10人の子供たちがいた。修行の果てに、彼らはついに最後の試練を与えられる。
それは、10人の仲間たちのうちでペアを決め、ペアになった相手を殺すということであった。
彼らはためらいながらも、ついに家族同然の仲間を、培った剣技でもって殺害する。
その生き残った中に、あずみはいた。
あずみら生き残りの5人は、これまで育った森を出て、修行の本懐である「戦乱の芽を摘む」という目的のため、爺の指示のもと暗殺という名の働きをはじめる。
命がけのやり取りの中で、ひとり、またひとりと欠けていく仲間。そして、成長し、多くの人と交流するうちに、自分の行いに疑問を持ち始めるあずみの苦悩。
そういった壮絶なストーリーが、大胆かつ繊細なタッチで描かれていく。
「あずみ」のレビュー
とにかく絵が素晴らしい。1巻の時点で完成されている。
人体や背景、表情、動作などの説得力が尋常ではなく、繊細に描き込まれているが、「見づらい」「どこを見せたいのか分からない」と感じさせられるところが一切ない。
特に登場人物たちが「走る」シーンは圧巻で、大人と子供の体格や機敏さの違いによる走り方の差が、パッと見るだけで感じ取れる。
足音や衣擦れの音さえ聞こえそうな、鬼気迫るリアルさがあるのだ。また、この作品はあずみらの剣技が光るアクションシーンが魅力的だが、それと同じくらい(もしかしたらそれ以上に)繊細な心理描写が魅力でもある。
閉ざされた山奥で剣士として育てられ、そのことに疑問も持っていなかったあずみが、外の世界、数多の人間に触れ、いくつもの苦悩が生まれていく。
また、その苦悩の内容によって、彼女の成長度合いや年齢(作中でははっきりとは明かされない)が推し量れるところも凄まじい。
「あずみ」が気になっている人へ
「あずみ」を読むとき、「この作品はグロいのではないか?」と心配している人もいるのではないだろうか。確かに、この作品は剣によるアクションシーンが多く、血が出るのは当たり前、腕が飛ぶわ首が飛ぶわの凄まじいストーリーである。
しかし、皮膚の下や内臓まで描かれるような漫画が多く登場する中では、意外にも比較的マイルドな描写に仕上げられているため安心してほしい。
私は幼少期、コンビニの立ち読みで「あずみ」を手に取り、内臓がガッツリ描かれたシーンを目にしてから若干トラウマになっていたのだが、本作で内臓までしっかり描かれているシーンは数えるほどしかなく、当時の私がよっぽど運が無かっただけといえよう。
また、歴史に疎い人でも、まったく違和感なく読み進められるストーリーなので、ぜひ手に取ってみてほしい。