アニメ論評

ボーイズラブの誕生と変化

ボーイズラブ小説

日本で最初のボーイズラブ小説

昨今、男性同士の恋愛を描いたボーイズラブ作品が流行っている。
だが、このブームはいきなり始まった訳ではない。
1970年代から静かに、ジワジワと浸透していったのだ。
そして、諸説あるだろうが、日本の商業誌でヒットした初めてのボーイズラブ小説といえば、竹宮恵子の「風と木の詩」だろう。


19世紀末のフランスを舞台に、少年達の愛欲や嫉妬、そして友情などが描かれている。
麗しいジルベールと、誠実なセルジュという対照的な2人の切ない愛は、当時の漫画界に衝撃を与えた。
この作品の誕生には、当時の漫画界の規制が関係している。
当時は、男女の愛し合う姿を描くだけでも大問題になったほどだ。
だが、作者の竹宮恵子は愛し合う2人のすべてを描きたかったのだ。
そこで、男女がダメなら男同士でという流れになったのだ。
次々と男達と淫らな関係に陥るジルベール、誘惑され心惹かれるセルジュの心理描写の繊細さに、多くの少女達は胸をときめかせた。
過激な性描写があるものの、この作品全体には、孤独や悲しさが漂っていた。
男女では表現しきれない切なさが、多くの少女達を熱狂させたのだ。


当時は、まだボーイズラブという言葉はなく、耽美という言葉で表現された。

JUNEによる進化

大々的にボーイズラブを扱った雑誌というと、その元祖はやはり「JUNE」だろう。
男性同士の、友情という言葉では片付けられない、深い関係がセンセーショナルに描かれている。
この雑誌の登場が、現在のボーイズラブ雑誌に繋がっているのだ。


この雑誌から、ボーイズラブの漫画が続々と誕生した。
少女達は、男性同士の切なく、狂おしい恋愛の数々に胸を焦がすようになった。
「風と木の詩」の作者である竹宮恵子が表紙を飾ったり、男性同士のラブシーンを撮影した耽美写真館などが話題を読んだ。
だが、この当時はまだ堂々とボーイズラブが好きだとは言えなかった時代だ。いくら作品を愛していても、少女達はそのことを密かな楽しみに留めておいたに過ぎなかった。



少女漫画でのボーイズラブ

男性同士の恋愛を描くことは、まだまだタブーという概念が拭えなかった時代。
少女漫画雑誌として知られる「マーガレット」で、大胆にもボーイズラブ漫画が連載されていた。


尾崎南の「絶愛-1989-」だ。


歌手の南條晃司と、複雑な家庭環境で育ち、孤独を抱える泉拓人との出会いと、激しく拓人を求める晃司の情熱。
そして、拒絶しながらも、次第に晃司の愛に心揺れる拓人の姿は、少女漫画界に大きな衝撃を与えた。
その人気は高まり、過去には南條晃司の名前でシングルが発売されたり、OVA化されたりとすさまじい勢いで進化していった。
その人気は、日本だけではなく、海外でも広く愛されるようになった。
まさに、ボーイズラブが市民権を得ようとしていた頃だ。

ボーイズラブの現在

現在、ボーイズラブ作品は次々とアニメやドラマ、映画化になっている。以前は隠れて応援していたジャンルが、堂々と好きだと公言できるようになっているのだ。
配信ドラマではボーイズラブ作品が上位に食い込んだり、ボーイズラブ作品の展示会が開かれたらもするようになった。
女性芸能人のなかには、自らボーイズラブ作品が好きだと公言する人も現れるようになった。
心理描写や性描写も多種多様になり、ナチュラルな恋愛としてとらえられているのだ。


男性同士の恋愛には、男女では決して成立しないような恋愛が描かれている。
タブーな相手とわかっているがゆえに、その恋愛には尊さを感じるのだ。


この先、漫画や小説だけではなく、映画やドラマ、アニメなどでもボーイズラブ作品を見かけることが多くなるだろう。