アニメ論評

漫画・ぼくの地球を守ってについて

ぼくの地球を守ってとは?

「ぼくの地球を守って」は1986年から94年にかけて少女漫画雑誌・花とゆめにて連載された漫画作品だ。
作者は記憶鮮明シリーズなどを手掛けた日渡早紀だ。


物語は東京を舞台に、前世の記憶を持つ高校生たちを中心に展開していく。
彼らの持つ前世の記憶は、地球ではない別の惑星でのもの。
また彼らは共通して月にある基地で、地球を日々見守る生活を過ごしている。
そこから、ムーンドリームと名付け、地球に転生した彼らは再び出会い、運命が重なり合っていく。
ぼくの地球を守っては、OVA化もされ人気を経たが、現在もこの物語の続編となる「ボクを包む月の光」、「ぼくは地球と歌う」が展開されている。

ぼくの地球を守ってのあらすじ

東京へと転校してきたばかりの坂口亜梨子は、慣れない環境を過ごしていたが、ある日偶然にもクラスメートの小椋迅八と錦織一清が怪しい雰囲気を醸し出している現場に遭遇してしまう。
二人の怪しい関係を疑う亜梨子だが、幼馴染である二人は共通の夢を見ることがあり、その話をしていたとのこと。
二人の話す月での前世の記憶を聞いたその日、亜梨子もまた自身が月から地球を見守っている夢を見るのだった。


一方、亜梨子のマンションの隣室に住む小学生の輪。
家族ぐるみの付き合いのある亜梨子と二人で留守番中、ベランダから落ちてしまう事故に遭う。
そのことがきっかけとなり、彼もまた月で過ごした記憶を蘇らせることとなるのだった。


迅八と一清は亜梨子がムーンドリームを見たことを知り、他にも同じ記憶を持つ人間がいるのでは?と思い、雑誌に情報を載せる。
そこから、同じ記憶を持つ2人と出会い、月基地で過ごしていたメンバーは再び出会うこととなるのであった。



ぼくの地球を守っての見どころ

物語は、前世と現世が交互に織りなす。
雑誌から出会った土橋大介と国生桜や自己で記憶が蘇った輪は前世での記憶を全て思い出しているが、迅八と一清は完全には思い出していない。
亜梨子に至ってはまだ思い出したばかりで本当に自分が木蓮だったのかと疑問に感じている。
しかし、少しずつ過去の話をすることで、どんどんと記憶が蘇るのであった。


輪はある目的のために月基地で共に過ごしたメンバーたちからキィワードを手に入れようとする。
そのためにまだ出会っていなかった秋海棠に前世で犯した罪悪感を煽り、利用しようとするのだった。
前世での記憶を持つがために、前世での後悔が現世に生きる彼らを苦しめていく部分が見どころの一つだろう。
彼らがどのように前世からの記憶に区切りをつけ、現世をまっすぐに生きていけるようになるのか最後まで読まなければ分からない。

ぼくの地球を守ってを読了した感想

主人公の亜梨子がなぜ一人だけ、前世での記憶が薄いのかはある意味カギを握っている。
迅八と一清が少しずつ記憶を思い出していくのに対して、一向に彼女の記憶は蘇らない。
紫苑の前世を持つ輪も、彼女の記憶が蘇ることを願うが、一方で彼は完全に蘇らないことにも安心をしている様子だ。
物語のキーマンである輪にも注目したい。


彼は亜梨子たちが高校生であるのに対して、一人だけ小学生である。
同じ時をして転生したようにも思えるが、一人だけが違うのだ。
そこには大きな理由があるのだが、一人だけ年齢が違う故に、彼を苦しませていく。
まだ未成長の体に過酷であった月での記憶が蘇ったために狂っていく輪。
また、彼らと同じような記憶はないものの、不思議な力を持つ薬師丸未来路にも注目したい。


彼と共に一般人であるはずの田村一登も彼らの事情に巻き込まれてしまう。
様々な人間を巻き込んだ過去の遺恨が少しずつクリアになっていくところが良かった。
過去に縛られ過ぎて今を生きることができていない人に、おすすめしたい。