中国軍の戦力移動という初期兆候
1. 初期兆候(インディケーション)と在台邦人避難の準備
「中国が動く前に、戦力の移動、集中があるので、事前に兆候はわかる」という点は、日米の情報活動において最も重要視されており、この兆候が日本の最初の対応を決定づけます。
1. 事前兆候(インディケーション)の把握
中国軍の大規模な戦力移動、補給品の集積、通信量の増加などは、衛星や偵察機、サイバー空間での監視によって事前に把握されます。この初期兆候に基づき、日本政府は以下の行動を開始します。
2. 在台邦人避難の手配(NEO)の開始
本格的な軍事衝突の数週間前、あるいは数日前には、日本政府は**在台邦人の避難(Non-combatant Evacuation Operation: NEO)**のための準備を秘密裏に進めます。この活動こそが、日本が最も脆弱になる瞬間です。
- 避難勧告・指示: 危機が迫れば、「避難勧告」や「退避勧告」が発出されます。
- 自衛隊の関与: 自衛隊の艦船や航空機、チャーターした民間機などが、邦人を台湾から沖縄や本土へ輸送する活動に投入されます。
2. 邦人輸送中の攻撃と個別的自衛権の行使
ご指摘の通り、邦人や米国の非戦闘員を輸送中の自衛隊や民間船が攻撃を受けた場合、日本の法的立場は劇的に変化し、個別的自衛権の行使が現実味を帯びます。
1. 攻撃を受けるシナリオと自衛隊の被攻撃
台湾へのミサイル攻撃や空襲が始まった「戦域」で避難活動を行う自衛隊の艦船や航空機は、高いリスクに晒されます。
- 中国軍の認識: 邦人輸送のために派遣された自衛隊の艦船や航空機は、中国軍から**「敵対勢力への後方支援」**と見なされ、誤射あるいは意図的に攻撃される可能性があります。
- 邦人・米国民の被害: 避難途中で巻き込まれる形で、邦人や米国民に被害が出る恐れもあります。
2. 個別的自衛権の法的成立と防衛出動
自衛隊の部隊が攻撃を受けた場合、これは**「日本に対する武力攻撃」**と見なされます。
- 武力攻撃の発生: 自衛隊の艦船・航空機・隊員が攻撃されれば、これは日本の主権侵害であり、個別的自衛権が成立します。
- 防衛出動の発令: 武力攻撃が発生した場合、日本政府(内閣)は速やかに**「防衛出動」を発令**し、自衛隊は攻撃してきた相手に対して武力による反撃を開始できます。この時点で、日本は正式に戦闘状態に突入します。
自衛隊自身が攻撃された方が、集団的自衛権の認定を待つことなく、より迅速かつ明確に「防衛出動」が発令される法的根拠となります。
---3. 防衛出動の連鎖:否応なしに戦火に巻き込まれる道筋
台湾有事の際は、複数の事態が短時間に連鎖して発生し、日本は自国の意思に関わらず、防衛的行動によって戦火に巻き込まれる可能性が高いです。
| 事態の発生源 | 自衛権発動の法的根拠 |
|---|---|
| 自衛隊艦船への攻撃 | 個別的自衛権(日本への武力攻撃) |
| 在日米軍基地への攻撃 | 集団的自衛権(日本と密接な他国への攻撃) |
| シーレーンの封鎖(武力伴う) | 存立危機事態(日本の存立を脅かす場合) |
米軍基地への攻撃(集団的自衛権のトリガー)か、避難部隊への攻撃(個別的自衛権のトリガー)か、いずれの事態が発生しても、日本政府は**「防衛出動」**を発令し、自衛隊は本格的な戦闘行動を開始します。これが、日本が否応なしに戦闘に巻き込まれる最も現実的な道筋であると言えます。
