コロナ禍の裏で進む世界的危機
コロナ禍ばかりが騒がれる裏で、密かに進んでいる「もうひとつの世界的危機」があるのをご存知だろうか。蝗害(こうがい)、つまりバッタの害だ。
草むらをピョンピョン飛ぶあのバッタである。
旧約聖書に描かれている「サバクトビバッタ」の大発生は、歴史的に何度も起きている事実であり、その都度深刻な被害を人間にもたらしてきたという。
バッタが圧倒的な数の力で農地の農作物はもちろん、貯蔵してある農作物までも食い尽くし、広大な地域に飢饉を引き起こす。
そんな恐ろしい「自然災害」が、いまこのコロナ禍の影で、確実に進行中だというのだ。
毒バッタはもはや誰にも止められない?
今回の蝗害は2019年6月にアフリカ東部で発生し、紅海とペルシャ湾を越える大移動の末に、いまや中国にまで到達する勢いだという。コロナ禍のせいで各地に蝗害対策の専門家を派遣し対処を進めることもままならず、頼みの綱はもはや何万羽ものガチョウやアヒルといった“迎撃兵”だというのだから驚きだ。
ちなみに日本人なら少なからず「バッタなんてむしろ獲って食ってやればいい」という発想が浮かぶだろうが、このバッタに至っては、殻は堅いし毒性はあるし、食べるなんて到底無理。
そもそも数が尋常ではなく、網で捕獲なんて出来るレベルですらないという。
さすがの中国人もこれでは食えない…否、お手上げというものだろう。
食糧危機が経済戦争を招く
この蝗害が中国に到達すれば、中国国内で食糧不足が生じ、海外への食料輸出がストップされる事態になることは容易に想像がつく。尖閣諸島の問題などで、ただでさえ日頃から仲の悪い日本ならなおさらだ。
また、中国内に「まずは自国民を優先せよ」という感情が蔓延すると、いままで海外に安い労働力を搾取され続けていた局面にも国民の目が向くかもしれない。
そうなればそういう安い製品を、いままでのような安いままでは売らなくなる可能性も出てくるだろう。
さすれば困るのは、安価な製品の供給を前提として成り立っている日本の経済である。
ことの次第によっては、武器を使った攻撃こそないとはいえ、十分に中国から「戦争」を仕掛けられたような事態になりえる。
爆弾なんぞ使わなくったって、経済面で国家規模のドンパチを決めることなど、やろうと思えばいくらでもやれる時代なのだ。
蝗害は日本再生の契機になるか
100均もスーパーもホームセンターもメイドインチャイナが影を潜め、他の国製のものやメイドインジャパンのもので埋まるだろう。いろいろな製品の部品なども、メイドインジャパンに取って代わるかもしれない。
それがコロナ禍で瀕死の国内中小零細企業を救う契機になればよいが、一度良質のものが安く手に入る贅沢を当たり前としてしまった日本人が耐えられるのか。また、海外への輸出が大幅に減退するキッカケになってしまわないのか。
中国との経済戦争が「当たり前のものを当たり前の価格で」「最大の国防策である自給率を見直そう」といった日本人の意識改革につながり、日本再生の契機になりうるならバッタも必ずしも悪者というだけでもないような気がしてしまうが、そこは悲しい哉、人間は、食べるものがなければ命の維持ができない訳です。
まずは世界の飢餓という最悪の事態を避ける方策を、中国も日本も国を超えて考える必要があるだろう。