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ガラスのピアニスト

石井ゆあと山内李奈は小学生時代は深夜アニメで盛り上がる親友だった。
しかし中学入学を境にゆあが同じ塾だったいじめグループの主犯格の斎藤南と行動を共にするようになる。

そして逆に李奈は「アニメオタク」としていじめのターゲットにされてしまう。

李奈はゆあに助けを求めるが裏切られ傷つき不登校になってしまう。

中2に進級したゆあは駅前のストリートピアノを弾く深夜アニメ「ガラスのピアニスト」の主人公にそっくりな少年に惹かれ遠くから眺めていたが告白する勇気はなかった。


中3に進級したある日、学校の音楽室で意中の彼が一人でピアノを弾いているのを発見し転校してきたことを知る。

驚きとともに運命を感じ告白を決意する。

しかし同学年に転校生は存在せず途方に暮れているある日、彼を待ち伏せするために侵入した放課後の音楽室で李奈と再会する。


李奈と石井勇気(本名拓海)が通う校内のフリースクールの存在、李奈と拓海が付き合っていることを知りショックを受ける。

裏切り

「中学で勇気みたいな子がいたら絶対告白する」

石井ゆあが言う勇気は深夜アニメ「ガラスのピアニスト」の主人公、石井勇気のことだ。

山内李奈は「私もだよ、勇気みたいな子が2人いればいいね!」「李奈は欲張りだな!」「だって取り合いたくないでしょ?」「そうだね」。


小学校の卒業式でそんな話をしたのが2人の最後の会話だった。


親友だった2人は同じ中学に進学することを喜んでいたはずだった。

しかし2人は全く別の道を行くことになる。
違うクラスになり、ゆあはいじめグループの主犯格の女子、斎藤南と仲良くなり、李奈は真逆に「アニメオタク、キモイ」と嫌がらせ無視のターゲットにされてしまう。


一学期の最後の日に李奈はゆあに「助けて」とLINEした。

夏休み中何度も「助けて」を送り続けたが一度も既読はつかなかった。


李奈はゆあの裏切りに絶望し学校に行けなくなってしまう。



ガラスのピアニストとの出会い

ゆあが2年生になり自分を取り戻せるようになっていたのは南と別のクラスになったこともあるが他に理由があった。

駅前のストリートピアノを弾く「ガラスのピアニスト」の主人公、石井勇気にそっくりな美少年と出会ったことだった。


出会ったと言ってもただ遠くから演奏する姿を見つめていただけだった。
告白することはおろか話しかける勇気すらない自分が情けなくて「2人なら話しかけるくらいはできたかも」とか都合よく李奈の存在を思い出すこともあった。



学校の音楽室でまさか?

ゆあは3年生になり少し帰りが遅くなった放課後、音楽室からいつもの駅前のストリートピアノの演奏が聴こえてきた。
「まさか」と思って覗くと本当に石井勇気ひとりで演奏していた。


夕焼けがピアノと彼の顔を照らし、より眩しく聴き慣れたメロディを新たなものにしていた。


全身が固まり声は出るはずもなかったが「運命!」という言葉が目の前に浮かび大きくなった。

「告白する!」と自分の心の声なのか誰かの声なのか分らないが心を動かしてくれた。


「出来る!」とその時確信できた。



2人いればよかったね!

「出来る!」の声は「やっぱり無理!」の声にとって代わっていた。

というのも転校生の石井勇気はどこにも見つからず心の勢いが日に日に失われていたのだ。

あの日の演奏を思い出すと勇気は絶対にこの学校の制服を着ていた。


3年では再び南と同じクラスになり下校を共にしていたので放課後遅い時間に音楽室に行くのは難しかった。
南が風邪で休んだ日、勇気君が演奏していた時間のちょっと前に音楽室に進入した。


暫くするとドアが開き、そこに立っていたのは勇気ではなく1年生の夏LINEからも削除した玲奈だった。


「ゆあ?」
「うん」
「学校終わりだよね?」

「うん、あのさ、ここでこの時間に石井勇気に会ったの。」

「石井勇気?ガラスのピアニストの?」

「そう」


玲奈は笑った
「石井勇気じゃないよ多分拓海のことだよね?似てるよね本当に」
「私の彼氏」
「えっ!」
「2年生から一緒に校内フリースクールに入って、本当に石井勇気だよね。クリスマスに告白されて」
「そうなんだ!」

「彼も不登校でここに転校してきたの。このフリースクールは学校とは別なの。ただ学校の音楽室とか理科室とか使ってるんだ。時間割とかもなくて好きなことだけやってればいいの。私は漫画を描いたりしてるし。拓海はパソコンで作曲とかしてるの、この学校は楽しいよ!」

「拓海、石井勇気が昼間の学校にもいればいいのにね?」

そう言い放った李奈の口角は上がっていたが目は決して笑っていなかった。

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