引越し先の出会い

お隣のキミエさん

引っ越してきた日の夕方、サヤカは初めてキミエさんに会った。

挨拶に出向いたお隣の玄関にキミエさんはニコニコして出てきた。
50才くらいだろうか。
ふくよかな体型に愛嬌のある顔立ちをしている。
引っ越しの挨拶と菓子折りを手渡したサヤカにキミエさんは言った。
「学生さん?もう夕飯は食べた?良かったら今作ってるから一緒に食べない?」
サヤカは驚きながらも応じることにした。部屋の片づけに集中していて夕飯のことはまだ何も考えてなかったのだ。

「一人で食べるのってつまらなくて。大したものはないけど・・・ごめんなさいね」

キミエさんはおひたしや煮物と一緒にクリームシチューを出してくれた。これが絶品というくらいにおいしかった。

「すごくおいしいです。うちのお母さんのよりずっとおいしいです」

「ホント?嬉しいわ。いつも一人なのに作り過ぎちゃうのよ」

そしてキミエさんは自分の人生について少し語り始めた。

年は51才、2年前に離婚して今はこのアパートで一人暮らしなこと、近所のスーパーでお惣菜を作る仕事をしていること、成人した娘が2人離れた場所で暮らしていること・・・。

「サヤカさんがね、うちの下の娘にちょっと似ていて。娘は保母さん2年目なのよ」
キミエさんの顔つきが一瞬母親のものになった。

お隣のキミエさん。

部屋が片付いたら今度は私が食事に招待しようか。