豆料理の小説

お豆ちゃん

あるところにそれはきれいな色のお豆ちゃんがいました。

ある日、お豆ちゃんは水を飲もうとして、汲んでいたお椀の中に落ちてしまいました。

お豆ちゃんは慌てました。

なぜならお豆ちゃんには手も足もないのです。

万事休す。
お豆ちゃんは体を揺すってみましたが、お椀の外に出ることはできません。

だんだんふやけてきました。


お豆ちゃんは息が苦しくなって体中に力を入れました。

そうすると体の横に亀裂が入り、ぷっぷっと黒い線が出てきました。

お豆ちゃんは、意識が遠くなりました。

でもとても気持ちが良いのです、お豆ちゃんは自分が天国に行くことが自分で分かりました。

すると、おばあさんが台所に戻ってきて、お豆ちゃんをつまむと煮物の中に放り込んでしまいました。

お豆ちゃんは大根や人参、ごぼうさんなどと一緒に鍋の中でゆらゆらと煮込まれました。

パラパラと白いものがかぶさってきて、次に黒いお水が降ってきました。

人参さんが、砂糖と醤油だと教えてくれました。

しばらく鍋の中にいて、暑くて暑くて汗をかいていると、お皿の上に乗せられて、食卓の上に置かれました。

仕事から帰ってきたお父さんが、うまそうだなと覗き込みます。

お豆ちゃんはちょっと誇らしげに、でも恥ずかしかったので根さんの後ろに隠れました。

お父さんは膝の上に男の子を乗せて晩酌を始めました。

男の子が箸でお豆ちゃんをつまむと、「あ、お豆ちゃん見つけた、1つだけしかないね。やったー、僕大好き。」と言って、ぱくっと可愛いお口におまめちゃんを放り込むと、おいしく食べてしまいました。