別れを悲しむ

守護神

 もうすぐお別れです。

 二度とその切れ長の瞳を見なくなるなんて……。


 私はあなたをずっと見守ってきたのです。
あなたが幼い頃からです。
私達はずっと一緒だったでしょう? 


あなたが私に笑いかけるたびに私もあなたに微笑み返しました。

あなたが悲しんでいるときは私も涙を流しました。

いつだって双子のように寄り添ってきたはずです。
 それなのに……。

 不安ではあったのです。

その男があなたの前に現れたとき、あなたがこれまで見たこともない表情をしたから……。

頬を染めて、俯いて、それでいて歌でも歌っているような喜びに満ち溢れて……。

 あなたは変わってしまいました。


 純朴だったあなたは、その男のために着飾ることを覚えた。

白粉を塗って、紅をさして……。

もうあなたは以前のあなたではない。

 私は悲しい。二度とあなたと会えないだろうから……。


 でも、あえて言いましょう。おめでとうと。あなたのこれからの人生を祝福しましょう。


 だから、そんな悲しそうな顔をしないで……。

「おい、いいのかい?」
「ええ、少し残念だけどね」
「別に新居に持って行ってもいいんだよ? ずっと使ってたんだろ?」


「でも、あなたに新しいの買ってもらったもの。子供用の手鏡は結婚を機に卒業するわ」