グレープフルーツの葉を食べたその後で
まあ君はグレープフルーツが大好きです。こんなにおいしいみかんをもっと食べたい。
まあ君のお庭でもグレープフルーツのみかんが採れればいいなと思いました。
植木鉢に種をまいたら、なんと芽が出てきたのです。
図鑑で育て方を調べて世話をしてきました。
植木鉢も毎年大きくしました。
5年たった今では高さ1メートル、たくさんの枝が伸びて深緑の葉を茂らせています。
寒さに弱い木なので冬の間は植木鉢を縁側に置きますが、春の訪れとともに庭に出します。
グレープフルーツの葉は蝶の幼虫の大好物なのです。
待っていましたとばかりに蝶がやってきます。
何をしにって、もちろん卵を産みに来るのです。
定番のモンシロチョウをはじめ、アゲハチョウ、カラスアゲハだってカップルで訪れて下見をしています。
小さなシジミチョウも仲間に入れてとやってきます。
今年もグレープフルーツの葉に産み付けられた卵から幼虫が現れ、葉を食べて大きくなっていきます。
幼虫は必ず葉っぱと同じ色をしています。
幼虫がどこにいるかは植木鉢の周りに落ちた糞を見ればわかります。
幼虫の成長につれて糞も大きくなり、新幹線の先頭車両に似た顔の幼虫が、さすがにその存在を隠しきれなくなってきました。
「もうじきさなぎになって、それからアゲハチョウになるんだよね」まあ君は毎日グレープフルーツの葉をのぞいて幼虫の育ち具合を観察しています。
ある朝のことです。
「あれ? 幼虫がいないよ」心配顔のまあ君は糞を探しましたが新しい糞はどこにも落ちていません。
その代わり、一枚の葉に鳥の糞らしき白い色がついていて、黒っぽい色をした液体が流れた跡を見つけました。
「まさか、鳥に食べられちゃったの?」「せっかく大きくなったのにー」「葉っぱと同じ色なのにどうして見つかっちゃったのかな」しばらく残念がっていたまあ君でしたが、急に何かを思いついたようです。
「あの幼虫はね、僕が寝ている間にさなぎになって、羽化して蝶になって、そしてお空へ飛んで行ったんだよ」