サラリーマンの野心と夢

 目覚めの悪い日が続いている、今日も悪夢を見た。

こんなにいい天気なのに気分がすぐれない。

あれからどれくらいたったのだろう、私がいい夢を見なくなってから。


 あの日、私はいつものように通勤電車に揺られ都心の会社に向かっていた。

ちょうど多摩川を渡る手前で電車が急停止した。

それはいつものことで、朝の通勤ラッシュではよくある事だった。

ふと窓から外の景色を見下ろすと、キラキラ光った川面が見えた。

その時、私は次の駅で降りてしまおうと思った。

思うだけならこれもいつものことだ。
こんな平日の午前中に仕事をサボって、ぼんやり川を眺めていたい。

サラリーマンならきっと誰でも思うようなことだ。

 連日の残業で疲れていたのかもしれない、売り上げが作れなくてイライラしていたのかもしれない、今日も朝から会議で嫌な上司から嫌味を言われるのは確実だった。

 だが、その日の私はいつもと違っていた、何も考えずに本当に降りてしまったのだった。


 いつか人は、鳥籠から逃げ出す小鳥のように、子供がギュッと握っていた風船の紐を離してしまい、あっという間に空高く飛んで行ってしまうように自由になりたいと思っている。

 独立して自分の会社を起こしたい、自分の思いどおりにやってみたい。

それも現実ではなかなかできないことで才能とか資質とかが無いと難しいことだ。

それはわかっている。

でも、夢を見たい、実現させたい、根拠のない自信があったのかもしれない。

 その後、私は会社を起こし、がむしゃらに働いた、私ができることはすべてやった。

しかし、会社は多額の負債を抱え倒産した。

今はホームレスだ。


 寒い、、、「起きてよ~遅刻しちゃうよ~」妻の声が聞こえた。