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私の場合、嘘つきは泥棒だと考える
私の友人「愛子」の話を聞いてくれ~出会い~
私と愛子は小学生時代の同級生だったが、その時は別段仲が良いわけでもなく卒業をした。愛子と再会したのは、就職活動をしている時とある研修でだ。
お互いに顔をパッと見ただけで名前を言えるほどで、それから少しづつ仲良くなっていった。
一時期は「同じ職場で働こうよ」と愛子から誘われ、数か月は一緒に働いた。先に辞めていったのは愛子。
こういう仕事への誘いがあると、先に辞めていくのは誘った方というのがセオリーだと私は考える。
私の友人「愛子」の話を聞いてくれ~親密~
愛子と親密になるまで、そう時間はかからなかった。なんせ、一緒にいる時間が長かったからだ。
愛子の家には旦那も子供もいるけれど、いつでもウェルカム状態でついつい夜中まで居ることも多かった。
少しづつ、確実に愛子の術中にハマっているとは気が付かなかった私は、かなり鈍感だったんだと今なら思う。
子供連れで遊びに行ったり、買い物に行ったりとベタベタすぎる程親しくなるにつれ、結構ディープな話まで聞かされていた。
愛子の半生はそれなりに壮絶だった。
私の友人「愛子」の話を聞いてくれ~嘘だらけ~
一年、二年と付き合いを重ねていくうちに愛子には他の友だちがいないのではないか?という疑念が生まれた。それとなく誘導しても「昔、友だちだった人がね・・・」と言うくらいで「今の友だち」の話がない。
次第に、自分がどれだけモテてきたか、魅力的かというマウンティングを仕掛けてくるようにもなってきて不快な気持ちになるのが嫌で少しづつ距離を置くことにした。
この頃、周りの噂から「愛子は嘘つき」という事を聞いていたから。
私の友人「愛子」の話を聞いてくれ~そして誰もいなくなった~
彼女が稀代の嘘つきだったことは、次第に分かってきた。学齢、結婚歴、職歴、全部全部嘘ばっかり、言い訳ばっかりだった事に気が付いた私。
少しメンタルが弱い人を見つけては親しいフリをして、精神的に支配するという怖い女だった。
だから「今」の友だちがいないんだと。
酷い目にあった子が自死したことをきっかけに、ボロボロと愛子のメッキが剥がれていく。
私は、愛子との縁を切った。
私が、愛子に費やした時間は無駄ではなかったと思えるけれど嘘つきは時間泥棒なんだと知った。
さよなら、愛子。