町田康

町田康の本

パンク作家が、今やペットエッセイスト?

小説家・町田康といえば、十代で「INU」というパンクバンドのシンガーを勤めた後、「くっすん大黒」で小説家デビュー。
そして「きれぎれ」で芥川賞を受賞した人気小説家です。
代表作に「パンク侍斬られて候」などもあり、「パンク小説家」として知られる町田氏ですが、近年はペットエッセイを書いたり、禁酒してロハスな生活を送ったりしているようです。
そんな町田氏の「ペット愛」に溢れたエッセイをご紹介いたします。

猫のあしあと

このエッセイは、町田氏と一緒に生きているたくさんの猫たちについて書かれています。
町田氏の家にいる猫たちは、今や十匹以上!
家猫として飼われている猫、はたまた人間によって捨てられたり虐待を受けていた保護猫の一時預かり猫まで、常時たくさんの猫がいます。
人間に心を開こうとしない保護猫にも、町田氏とパートナーの奥さまは、真摯に向き合っていきます。


保護猫の中には、悪いウイルスに冒されていて、早世する猫もいます。
そんな猫にも真摯に寄りそう町田氏の姿は、ぐっと涙を覚えます。



スピンク日記

こちらは、ある日町田家にやってきたスタンダードプードルの「スピンク」の目を通して、町田氏の日常を描いた作品です。
さながら、夏目漱石の「我が輩は猫である」の犬版ですね。


このスピンクも、ブリーダーさんの家で生まれたものの、引き取り手がいなかった保護犬さんです。
身体の大きなスタンダードプードルは、飼うのも大変なんですね。
スピンクの目を通して、失敗ばかりする町田氏の日常はおもしろみに溢れています。
「こんにちは、スピンクです」に始まる文章は、本当に犬がしゃべてっているような不思議な感覚に包まれます。

スピンクの笑顔

こちらは「スピンク日記」から始まる「スピンクシリーズ」の四作目で最後の作品です。


エッセイの中で9才から10才になったスピンクは、もうシニア犬。
それでも、アクティブで旅行が大好きで、町田氏と奧さんが大好きなスピンクの毎日は笑顔があふれています。
けれど、そんなスピンクがある日病に倒れます。
そのまま息を引き取ってしまうスピンク。


最後の章は、スピンクと共に育った弟犬のキューティーの目線で描かれています。
スピンクの一生が喜びにあふれていたこと、町田氏たちに深く深く愛されていたこと、犬好きの方もそうでない方も、涙が必死の傑作エッセイです。