西加奈子

西加奈子の著書

映像化も多数されている、直木賞作家「西加奈子」の魅力

小説家「西加奈子」の作品といえば、どんなイメージをお持ちですか?


近年では「サラバ」で直木賞を取ったことでも知られていますが、彼女の作品は異国情緒漂う不思議な世界観が癖になります。
今回は、個人的に大好きな西加奈子さんの作品を三作品ご紹介いたします。


巣ごもり中に、その不思議な世界観にはまってみてはいかがでしょうか?

ホテルニューハンプシャーの影響を受けた?「さくら」

西加奈子さんの出世作といえば、「さくら」ではないでしょうか?


「さくら」とは、ある一家に飼われている犬の名前。
この一家は、さくらをかわいがる、平凡な一家のはずだったのですが……。
家族に、次々と不幸が訪れます。
イケメンでクレバーのお兄さんが、交通事故で顔面が崩壊&半身不随。
それを苦にした自殺。
そして、その交通事故の原因を作ったのは、妹の美貴の兄への恋愛感情。
それを知った父の失踪。
不幸がてんこ盛りの展開が訪れるのです。


家族の一代記という点では、アービングの「ホテルニューハンプシャー」影響を感じさせます。
その不幸からの再生に犬の「さくら」も一役買い、深い感動を呼ぶ作品です。



摩訶不思議な世界観が炸裂「ふくわらい」

この物語の主人公は、出版社に通う真面目な文芸編集者です。
しかし、彼女は実はとても破天荒。
全身にはびっちりと入れ墨が施されているのです。


といっても、彼女が元ヤンキーであるわけでもなく、子供のころに海外を転々としており、価値観が普通とは全く違うのです。


そんな彼女は、海外の儀式で亡くなった父の遺骨を食べたこともある、なんともびっくりな経験もしているのです。
そして、この作品で描かれる恋愛もとても不思議です。
「先っちょだけを中にいれたい」という男性と知り合ったり、実際に「先っちょだけ」を中に入れて初体験を済ませたり。
こんな奇抜なことを書いていながら、実に清涼感を与える文体は「さすが」のひとことです。

ある一件からの主人公の転落人生「サラバ」

言わずとしれた西加奈子の代表作である直木賞受賞作「サラバ」。


この物語は、家族の謎をめぐる一代記です。
破天荒な姉と母を持つイケメンの主人公が、家族を冷静に見ながら、実にうまく世を渡っていく。
が、そんな主人公の人生が一変するのは、「ハゲ」てきたこと。
頭髪が薄くなってきたことで、イケメンバイアスが強制的に外された主人公は、まさかの転落人生を送ることになるのです。


なんだか、ここに強烈なリアリティーがあります。
そこから立ち上がった主人公が、小説を書くことに救いを求めていき、この小説「サラバ」は、その主人公が書いている小説なのだという結末が爽快で素敵な作品です。