ピンチポイントが小説のラストを決める

ピンチポイントとは何か?

ピンチポイント
小説を読むとき、登場人物たちの次の行動が気になって、思わず惹き込まれてしまったことはないだろうか。
今回、ご紹介するのは小説や物語の構成においてよく使われているピンチポイントについて紹介したい。


ピンチポイントとは、簡潔に言ってしまえばそれは、小説の中に出てくる人物たち(主に主人公)が窮地に立たされることによって、物語が次の展開へと動く地点のことだ。

これはエンターテインメント小説(大衆小説)においてよく使われる手法で、とくにサスペンスやハードボイルドもの、犯人を追い詰めてゆくミステリの分野、また個人的な苦悩を描くという意味では純文学系の作品においても広く使われているテクニックである。

ピンチポイントの特徴とは

ピンチポイントがなぜ広く使われているかについてはいくつか理由がある。

ひとつは単調な物語に緩急を持たせることによって、読者の興味を刺激することができるという点である。


あなたはアップダウンもなく、真っ直ぐに低速で動くジェットコースターに乗りたいと思うだろうか?
もはやそこには非日常のスリルはなく、ただ指定されたコースを進み続ける日常と同じではないだろうか?
これでは、非日常を体感する「小説の醍醐味を味わえない。

もしあなたが書きたいと思う小説の読者が、ただ単調で平穏な物語を求めているなら、ピンチポイントは使用せず、ただ淡々と日常を描けばよい。

しかし多くの読者は、小説の中に日常の中にはない「非日常の体験」を求めて本を開く。
そういった読者に向けて書く時、ピンチポイントのない小説はおそらくつまらないものになってしまうだろう。



ピンチポイントの副次作用には、実は登場人物が現実に存在している、いま正に頁を繰っている読者と同じ世界にいると思わせる作用があるのだ。

そして読者にそう思わせることができたとしたら、あなたが書いたキャラクターは、はじめて生き生きとした像を結ぶことになる



ピンチポイントが必要な理由

小説を書く時に、なぜピンチポイントか必要なのか、それは物語に波が必要だからである。

ジャンルにもよるが、もしミステリーやサスペンスの場合、平坦な波だったら面白味があるだろうか。
おそらく、淡々としたつまらないものになるだろう。


だが、波ができることにより、物語は驚くような展開を見せ、読者をあっと驚く世界へと誘ってくれる。


ピンチポイントというのは、まるで物語を美味しくするためのスパイスのようなものだ。

あるかないかでは、その仕上がりは大きく違う


小説を書く時には、いかにピンチポイントが重要な鍵になるかを知っておくべきだ。

なぜ、ピンチポイントが必要か?

文芸にも様々な種類があって、話の筋の面白さ(主にエンタメ作品)、奇想天外な構成や作者の独創的なアイデアによって読者を惹きつける(SF作品等)、キャラクターや世界観によって作品世界を味わうもの(ファンタジー小説、ライトノベル)など、作者が書くジャンルによって見せ場となるものは変わってくるが、ピンチポイントの手法はどのようなジャンルにおいても使用されており、とくに読者が登場人物に感情移入しやすくなり、読み手の興味を引きつけておくためには有効なテクニックである。

主人公や登場人物たちを窮地に立たせることによって、物語は展開せざるを得なくなる。

仮に、ハードボイルド小説などで銃を突きつけられた主人公の探偵が、そのような『ピンチポイント』に立たされたときに、何もせずにいたとしたら、その小説は代わりの主人公を新しく立てでもしない限り、そこで話が終わってしまうからだ。



ピンチポイントの入れ方

ピンチポイントが小説を引き締めるからといって、すぐに入れるのは逆効果だ。

入れるなら、読者が飽きた頃が一番だ。


冒頭というのは、読者はこれから何が起きたのかが気になっているため、ここでピンチポイントを入れる必要はない。
肝心なのは、後半間近だ。

読者は、なかなかわからないシナリオの結末イライラしてきている。

なかには、読むことを止める人もいるだろう。

ここが、ピンチポイントを入れるところだ。


物語に飽きてきた読者は、ピンチポイントの思わぬ展開に心を踊らせて、一気に先に進む可能性かおる。

そして、ピンチポイントが盛り上がれば盛り上がるほど、読者は先が気になって仕方がなくなるのだ。


読者が飽きそうな場所をあらかじめ探ることも大切だ。
そして、ピンチポイントというのは、多ければいいというわけではない。
ここぞという時に入れるべきなのだ。



どんなピンチポイントが魅力的か

ピンチポイントというのは、その内容が重要になる。
せっかくのピンチポイントだって、内容が薄かったら意味がないし、読者はガッカリする。


大切なのは、読者をいかに裏切るかだ。

読者は、読みながらラストを予測するものだ。

ここで、読者が夢中になるのは、自分の予測が外れた時だ。


たとえば、いくつもの状況から、ある人物が犯人と目星をつける。
だが、実は真の犯人は主人公の身近な人物で、主人公を危機的状況に陥れる。


読者は、思わぬ展開に手に汗を握り、先の展開を予想する。
そして、知らず知らずのうちにどんどん物語に引き込まれていくのだ。

作者は、常に読者の予想の先を歩くことが必要なのだ。

そうすることで、初めて読者を裏切ることができるのだ。



ピンチポイントのまとめ

ピンチポイントの注意点

ピンチポイントは、ただ入れればいいというわけではない。
場合によっては、ラストが決まらない可能性がある。


よくありがちなのが、伏線を入れすぎることだ。

ピンチポイントを盛り上げるためには、時として伏線も必要だ。
だが、伏線を入れすぎると作者本人も収拾がつかなくなる


伏線というのは、ほどほどにしておくぐらいがちょうどいいのだ。
そして、ピンチポイントを書く時には、希望を残しておくことも必要だ。


主人公が生命の危機に陥るほどピンチになった時でさえ、わずかな希望を感じさせるシーンを入れておくと、読者は先を読みたくなる。

なぜなら、読者の多くはバッドエンドを苦手としているからだ。

この先には希望があると思わせる方が、ピンチポイントは活かされるのである。

緩急のある小説において必要なもの、型と型破り

ピンチポイントには様々な効用があり、小説を書く上でぜひ覚えておいていただきたいテクニックのひとつだ。

物語においてがあるのは、それは読者を楽しませる上で有効だと考案されたものであるからだ。


また書き手にとっても、ピンチポイントは物語を展開させるという意味で、執筆の助けとなる。

窮地に立たされた主人公が動かなければ物語が進まないという、最悪の状況を物語の中で設定したときに、ある意味ではその作者も同じように窮地に立たされている

その地点をどのように乗り越えるかを描くことによって、書き手が何を考えて物語を書いているか、その地の部分が読者の前に炙りだされるからだ。


どこにも逃げ隠れはできない、その部分を抉り出してこそ、ピンチポイントは単なるテクニックの域を超えて、書き手自身のオリジナルな作品に近付いていくのである。

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