小説の主人公の魅力について

物語の主人公について。魅力ある主人公とはなにか?

物語がつまらない原因のひとつは主人公に魅力がないから。

では魅力ある主人公とはなんなのか、それは変化を起こす主人公。
変化とは性質そのものが変わってしまうこと。
そのためには冒頭から主人公が間違っていると書きやすい。

ストーリーありきで主人公を動かさない。
結局は主人公の思いが物語を動かす。

あなたの作品がヘタる理由

最近はスマホの爆発的な普及に伴い、色々なウエブサイトで小説や漫画がタダで読めるようになった。
子供の頃に少ない小遣いを捻出して本を買い漁り、散々に散財し続けてきたおじさんからすると実に羨ましい時代になったものである。


これだけ手軽に安く(ほぼ無料で)読み物が普及すると創作意欲を刺激され、「私も書きたい!」と自ら発信していく強者もいらっしゃるだろう。


自分の手で小説が書けるなんて。しかもそれを世の中に発信できるなんて!
そんな風に当初はウキウキで書いたのに、そのうち「あれ・・・?」となって。

掴みは面白く書けたのに、書き進めていくうちに急に色褪せて見えてきてしまって。
なぜだろう? 
なにがしっくりこないのだろう? 
なんでこんなに面白くないんだろう?

その原因も分からないまま気分は乗らず、結局は「もうイラね!」と放り出してしまった。
そんな作品が記憶とパソコンの中にごろごろと眠ってないか?

私はあるぞ。

だって上記のあるあるネタは全部私の体験談だ。

小説が面白くない原因

さて、そんな風に作品を永眠させてしまう原因とはなんだろうか?
答えは簡単、つまらない。
ではつまらなくさせているものは何か。

恐らく答えの一つは、主人公に魅力がないからだろう。



具体的に魅力のないストーリーを作ってみる

具体例があると分かりやすいだろうから、面白くなさそうなストーリを作ってみる。

『主人公はとある高校から転校してきたサッカー大好き少年。
当然その学校でもサッカー部に入部することに。
部のみんなと切磋琢磨し、どうにか高校最後の大会でレギュラーを掴む。
初戦を突破するも2回戦で敗退。

泣き顔でグラウンドに座り込む主人公。
好きだった可愛いマネージャーに慰められ、高校生最後の大会は終わった』


なんとも切ないストーリーになってしまった。
個人的には好きな終わり方だが。
まあ、それは置くとして問題はこのストーリーが面白いかどうかだ。


多分多くの人は「山場もないし主人公も冴えないからつまらない」と答えるだろう。


それは正しい。
だが間違ってもいる。

ストーリーに山場を作る

というのは、ストーリーはこのままでも山場は作れるからだ。
では誰が作るのか? 

それはもちろん主人公だ。



魅力ある主人公となはなにか

主人公が山場を作る、これは物語の鉄則だ。
「だったらもっと冴え渡った主人公の方がいいのかな。
日向小次郎みたいなエースストライカーで翼みたいな司令塔も出来て・・・」
なんて考えを思い浮かぶ方もいるかもしれないが、それも違う。


主人公は別に冴えないままでいい。
むしろ上記の切ないストーリーには冴えない方が似合うだろう。

誰もがヒーローになれるわけではない。
だからこそそこにはリアリティがある。
華々しいだけが取り柄の物語ばかりを見てきた人には、惹きつけられるドラマがあるだろう。

魅力的な主人公に求められる設定

では、冴えなくても魅力ある主人公とはなんだろうか?
それは変化する主人公だ。

変化といっても何かすごいスキルを手に入れたとか、最近ありがちなそんな小手先の変化ではない(それは設定と言うんだ)。

主人公の考え方や行動といった性質そのものが変わってしまうことが変化なのだ。


そう聞くと「それってなんだか難しそう」となりがちだが、実は簡単である。
そもそも主人公が物語の冒頭から何かを間違っていればいいだけだ。

事件や人や物事の解釈を最初から間違っていたり、なにか大切なことに気付いてなかったり、あるいは夢や希望を諦めていたり。
そういった状況から主人公をスタートさせてあげればいいだけだ。

主人公が物語を動かす

例えば上記の主人公なら、サッカーをすることは大好きだけど、試合に出たいとは真剣に思っていない。
ただボールを蹴って、みんなとワイワイやってるのが楽しい、そんな感じだ。

しかし、懸命に練習する部活の仲間たちと共にするうちに、試合に出たいという欲求が芽生え始める。
可愛いマネージャーや試合に負けて涙する先輩たちがそれに輪をかけて、芽生えた思いに気付かされる。
そんな変化を見せてあげればいいのだ。



結局は主人公が物語を作る

何かを間違っていたり、大切なことに気付いていなかったり、人生を諦めていたり、主人公はそれらに気付かされることで物語は動く。
気付いたからこそ何かを変えようとしてまた物語が動く。
そんな連続で物語は成り立っている。
これは大切なことだから絶対に覚えていてほしい。

必ずしも、起承転結や3部構成にこだわる必要はない

創作者はきっと小説の構成として起承転結や3部構成を使うだろう。
その際やりがちなのがストーリ(出来事)を消化することばかりに目を向けることだ。
「ええーと、起承転結がこうだから、ストーリーはこうでだから主人公はこう動かそう」
そんな風に型にはめて登場人物を動かそうとする。


それはあながち間違いとも言えないが、ストーリーと主人公の変化に矛盾が生じた時は、ストーリーを変更させるべきだ。
なぜなら先に述べたように、主人公の思いが物語を動かすからだ。
そこを踏まえ創作していけば、きっと何時か素晴らしい作品が作れるはずだ。

» 起承転結とは?物語展開の基本について

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