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川に飛び込む小説

川に行こう

「川に行こうか」
あるとき、バイト先の伊藤先輩が言った。

川というのは、水が流れている川だろうか。バイト先からほどない距離に川はあるのだが、そこに行くのだろうか。

「川ならそこにあるじゃないですか」

「そこの川は遊泳禁止だろ。俺が行こうと言っているのは、みんなで泳げるような川だぞ」

そんな伊藤先輩の声に、バイト先の友人の和田と岡田が乗り気になった。

さらに、伊藤先輩の彼女の松本も来るという。

みんなはノリノリだが、俺は乗り気がしなかった。



泳げないんだよ

というのも、俺は泳ぐことができないのだ。

なので、川に行って水でぱしゃぱしゃと遊ぶくらいであればできるかもしれないが、みんなのように遊ぶことはできない。
すると、伊藤先輩が言った。

「今回行く川は、泳ぐ場所がたくさんあるわけじゃないぞ」

それなら行っても良いかもしれない、と思った。

遊泳と言っても、きっと俺が思っているような足元に流れている水をかけあって遊ぶようなことなのだろう。

そして月日はあっという間に流れ、遊びに行く当日になった。



川へ着くと

川に着くと、確かにあまり泳げる場所はなかった。
そのため、伊藤先輩や和田、岡田は少しつまらなそうだ。

俺はと言うと、水をすくってみんなにかけて遊んでいた。

こういう体験もありだよな、なんて思っていると、伊藤先輩があるものを見つけた。

「ここから飛びこめるらしいぞ!」

覗いてみると、5mはありそうな高さの崖があった。

下には水が流れているが、随分と深そうだ。

「我慢できないから俺はもう行くぜ!」

そう言って、伊藤先輩が飛んだ。
それに釣られるかのように、和田と岡田も飛んだ。



飛ぶことに

着水すると、やはりかなりの深さのようでみんなは泳いで壁に掴まったりしていた。

伊藤先輩や友達が飛んだのだから俺が飛ぶ番じゃないか、という空気が流れたが、飛びたくなかった。

飛ぶことはさほど怖くはないが、泳げないのだ。なので、飛びこんだあと溺れるのは目に見えている。


なので断っていると、周囲はがっかりしていた。

空気を冷めさせる奴はいるよな、というような感じの雰囲気になり、俺は我慢ができなくなった。

「いったらー!!」

飛びこんだ。

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